2023/01/30
お子さんの矯正治療には「1期治療」と「2期治療」の2段階あるのですが、ご存じでしょうか?お子さん歯並びや矯正を始める時期によって治療の仕方が変わってきます。
1期治療は、お子さんの骨の成長を利用していく治療です。上下の顎のバランスを整えるように矯正を行い、咬み合わせを安定させていきます。イメージとしては、歯がキレイに並ぶ土台をつくってあげるのが1期治療だと思ってください。
お子さんの歯並びの状況や歯の生え変わりの時期によって、矯正治療を開始する年齢は変わってきます。早いお子さんですと4歳くらいから矯正治療を始めることもあります。
一概に「何歳から矯正治療を始めるといい」とは決まっていません。成長には個人差もあり、お子さんの協力度なども考えながら矯正治療を開始する時期を決めていくことになります。
2期治療は、生え揃っている歯をキレイな歯並びになるように動かしていく治療です。永久歯が全て生え揃ってから始める治療で、大人の矯正治療と同じ治療方法になります。1期治療で土台を整え、2期治療で歯を並べていくという流れになります。
2期治療は、前から7番目の歯(12歳臼歯)が生え揃う中学生ごろから矯正治療を開始していきます。
1期治療で土台づくりをしていると2期治療の期間がスムーズに進むため、2期治療が短期間で終わることが多いです。また、1期治療を行うことで歯を抜いたり削ったりしなくても矯正治療を行うことができます。
小児矯正は1期治療~2期治療まであり、トータルの矯正治療期間は2期治療(大人の矯正治療)だけ行うよりも長いです。しかし、治療方法や使用する装置など「子どもだからできる」選択肢も増えます。
小児矯正を開始する時期はお子さんによって変わってきます。歯並びが気になったときに1度、歯医者に相談することをおすすめいたします。
小児矯正で使用する装置には、たくさんの種類があります。お子さんの咬み合わせや歯並びの状況に応じて使い分けていきます。
1つだけ使うこともあれば、いくつかの装置を組み合わせて矯正治療を行っていくこともあります。
・小児矯正で使用する矯正装置には3種類あります。
・可撤式(かてつしき)矯正装置
・固定式矯正装置
・顎外固定装置
大人の矯正装置は何となく分かる方も多いとは思いますが、小児の矯正装置は知らないという方も多いと思います。
それぞれの装置がどんな装置なのか、特徴についてお話していきます。
可撤式(かてつしき)矯正装置とは、プレートタイプやマウスピースタイプなどの取り外しのできる矯正装置のことを指します。
可撤式矯正装置の良いところは、装置を取り外すことができるため食事や歯磨きは今までと同じように行うことができます。そのため、矯正装置が入っても虫歯のリスクが高くなることはないでしょう。
可撤式矯正装置の難しいところは、お子さんと親御さんの協力がとても重要になってくるところです。矯正装置を使わないと歯並びは治りませんし、矯正装置の管理ができないと壊れたり失くしたりということも考えられます。
お子さんの負担なども考えると取り外しができるメリットは大きいと思います。お子さんの性格や親御さんの手間なども考えながら選択してみてください。
固定式矯正装置とは、歯に矯正器具をつけてしまい、お家では取り外すことのできない矯正装置です。歯医者で専用の器具を使い、取り外しをしていきます。
矯正装置を入れたときは、多少違和感があるでしょう。しかし、だんだんとお口の中に矯正装置が入ってても違和感がなくなってきますので、ご安心ください。
可撤式矯正装置とは違い、歯に固定をしていますので「矯正装置が使えなくて治らない」ということはないです。
デメリットとしては、矯正装置の不具合があっても取り外しができないため、その都度歯医者に来院していただくことになります。また、食べ物が挟まりやすくなったり歯磨きがしにくくなったりします。虫歯にならないように気をつけておく必要があります。
顎外固定装置は、お口の外につける矯正装置になります。
1日12時間以上の使用を目標とし、お家にいる時間や夜間寝ている間に使用していただきます。お口の外に矯正装置がついたまま寝ていただくようになります。
慣れるまでの違和感や夏場の汗・蒸れなどの対策など色々な問題がでてきやすい矯正装置です。親御さんにもお子さんのモチベーションや装置の着脱などのサポートをお願いいたします。
可撤式矯正装置といってもたくさんの種類があります。歯を動かす装置もありますが、機能的矯正装置と言って、上下の顎のバランスを整えていくように成長を促す矯正装置もあります。それぞれの特徴について説明していきます。
拡大床は、歯列を拡げるための矯正装置です。歯が並ぶスペースが足りない歯列の方に使用していきます。
床と呼ばれるプレートの真ん中にネジが埋め込まれています。そのネジを1~2週間に1回まわし、プレートを拡げていきます。
バイオネーターは上下がくっついている床矯正装置です。機能的矯正装置とも言われ、歯を動かすのではなく筋肉の動きを利用することで下顎の成長を促す矯正装置になります。下顎の成長が小さく、上下のバランスが悪い場合に使用していきます。下顎が成長をする6~13歳くらいで使用していきます。
下唇の力が強い方や噛んでる方は、下の前歯が内側に倒れてきます。下の歯と下唇の間にリップバンパーを入れることで下の歯に必要以上の力がかからないようになります。
ツインブロックは、上下に分かれている床矯正装置です。機能的矯正装置の1つで、ツインブロックを入れて咬み合わせると下顎が前にズレるような傾斜がついています。
バイオネーターと同じような効果が期待され、上下のバランスを整えるための矯正装置になります。
ムーシールドは受け口に使用するマウスピース型の矯正装置になります。3歳から使用することができ、早期治療が可能な矯正装置です。
上顎を前に、下顎を後ろに下げるような咬合誘導が行われます。また、お口周りの筋肉や舌の癖なども整えてくれる矯正装置です。
F.K.O(エフカーオー)は、上下がくっついている矯正装置です。機能的矯正装置で、上下の顎のアンバランスなどを筋肉の働きを利用し、バランスを整え成長を促していく効果があります。
「インビザライン」というカスタムメイド型のマウスピースの矯正装置を使用した治療方法です。インビザラインファーストは、乳歯と永久歯が混在している混合歯列期の治療で使用できます。
とにかく見た目が目立たない矯正装置です。ワイヤーなどもないため、スポーツなどの制限もありません。
いろいろな歯並び・咬み合わせに対応している矯正装置ですので、極端に難しい症例ではない限りどの患者さんでも選択できる矯正装置です。
お口周りの筋肉のバランスや舌の癖などによって、歯並び・咬み合わせに影響してきていることがあります。その筋肉のバランスを整え、舌の正しい使い方を習得することで歯並び・咬み合わせを良くしていくのが、トレーナーと呼ばれるマウスピースです。
この矯正装置は、使用するだけではなく舌の使い方や呼吸の仕方などのトレーニングを合わせて行っていきます。
固定式矯正装置は、お口の中に固定してしまうため自分では取り外しができません。ワイヤーの力によって、歯や顎全体を拡げていく力をかけていきます。可撤式矯正装置に比べると痛みを感じやすくなります。
クワドヘリックスは、ワイヤーのバネの力を利用して歯列の横幅を拡げていく矯正装置です。歯の裏側にワイヤーがくるため、気になって舌で触っていると舌が痛くなることがあります。
GMD・ペンギュラムは、6歳臼歯(第1歳臼歯)を後ろに移動させる矯正装置です。歯を傾斜させずに後ろに移動させることができます。移動させた後は、装置を変更し、手前の歯も順番に後ろに移動させていきます。
この矯正治療を行うことで、抜歯矯正を回避できることが多いです。
急速拡大装置は、歯列の横幅を拡大していく力をかける矯正装置です。プレートタイプの拡大床は徐々に拡げていくのに対し、この矯正装置は「急速」とついているように短期間で大きく拡げていきます。
上顎は、右と左の2枚の骨がくっついてできています。急速に拡大することで2枚の骨を離し顎を拡げ、その隙間に新しい骨がつくられることで顎を大きくしていきます。
拡大する期間は短いのですが、骨ができるまで固定をしておかないといけないため、装置は数か月~1年くらいは入れたままになります。
リンガルアーチは、前歯を押す力をかけることができる矯正装置です。また、歯列の大きさを保つためにも使用されることがあります。
タングガードと名前にあるように舌をガードする矯正装置です。
舌の癖があり、飲み込みや喋るときに舌が前に出てしまい、前歯の噛み合わせが開いて開口と呼ばれる咬み合わせになります。開口の方によく使用する装置で、上の前歯の後ろあたりに舌が前に出ないように柵や突起がつけてあります。
前歯のみに大人の矯正治療で使用するブラケットをはり、前歯のガタガタやすきっ歯・前歯を前後に動かしたいときに使用していく矯正装置です。
歯を1本1本動かせるため、捻じれている歯や歯の傾きなどの調整をおこなうこともできます。
上下の顎のアンバランスが原因で咬み合わせが悪い場合には、上下の顎のバランスが良くなるように矯正治療を行っていきます。お口の外(頭や首など)に固定をおき、顎の成長抑制や促進・歯を動かす力をかけていきます。
おでこと顎に固定を置いたフェイスマスクのフックと口腔内の装置についているフックにゴムをかけることで、上顎を前に引っ張る力がかかる矯正装置です。
受け口の方に使用する矯正装置です。下顎が前に出ないように成長の抑制を行います。く上
この矯正装置単体で使うことはあまりなく、上顎にリンガルアーチを入れて使用しチンキャップと併用していきます。これにより上は前へ下は後ろへ力をかけ咬み合わせを改善していきます。
ヘッドギアは、子どもの成長期に使用することで上顎の成長抑制を期待する矯正装置です。また、上顎の奥歯を後ろに動かすこともできます。
2期治療は、大人の矯正治療と同じ治療になります。1期治療で土台の矯正治療を行い、2期治療ではワイヤーの矯正かマウスピースの矯正で仕上げの矯正治療を行っていきます。
歯の表側にブラケットと呼ばれる矯正装置をつけ、ワイヤーの力で歯を1本1本動かし歯並びをキレイにしていきます。
歯の裏側に矯正装置をつけ治療を行っていきます。矯正装置が見えないため、見た目に気にならない矯正装置です。歯の裏側に矯正装置がついているため、舌に当たりやすくなるのがデメリットになります。
マウスピースを1~2週間に1回交換することで、歯を少しずつ動かして歯並びをキレイにしていきます。ワイヤー矯正に比べ痛みが少なく、見た目にも矯正していると分からない矯正装置になります。
自己管理が必要にはなってきますが、マウスピースの着脱や管理が難しいわけではありませんので安心してお使いいただけます。
小児矯正には、たくさんの種類があります。「絶対にこれがおすすめ!」という治療方法は
ありません。
顎を拡げたり成長を促しバランスを整えたりする矯正治療は、成長期の時期に行うからこそ効果が出やすい矯正装置です。小児矯正は、大人の矯正治療では使えない矯正装置もあり、治療の選択肢が増え、様々な可能性があるのがメリットだと言えます。
歯医者によって使用する矯正装置は変わってきますし、お子さんによって向き不向きもあります。たくさんある矯正装置の中でお子さんに合わせて矯正装置を選択していくことがスムーズに治療を進めていくための1つのポイントです。
まずは、お子さんの歯並び・咬み合わせの現状とそんな治療方法になりそうなのか知っていくことが大切です。ぜひ一度、歯医者に相談してみてください。